「うちの子、いつも口が開いてる気がする…」
そんな小さな気づきが、実はとても大切なサインかもしれません。

子供の「口呼吸」は、ある日突然始まるわけではありません。多くの場合、乳幼児期から少しずつ習慣化していきます。たとえば、いつも口が開いている「お口ぽかん」の状態を思い出してみてください。寝ているときだけでなく、テレビを見ているときや遊んでいるときも口が開いている場合、それは口呼吸の始まりかもしれません。

特に注意が必要なのは、子供自身に「鼻で息がしづらい」という自覚がないケースです。周囲の大人が気づいてあげないと、口呼吸が日常化してしまい、成長とともにさまざまな問題を引き起こす可能性があります。口呼吸はクセとして定着する前に、早めに気づき、適切な対応をすることが重要です。

子供の口呼吸に潜む4つの原因

子供が口呼吸になる理由はひとつではありません。
多くの場合、いくつかの原因が重なって「鼻で呼吸できない」「口で息をする方が楽」という状態が習慣化しています。ここでは代表的な4つの要因を紹介します。

鼻づまりやアレルギーなどの身体的要因

慢性的な鼻炎やアレルギーがあると、鼻で十分に空気を通せず、自然と口呼吸が身についてしまいます。
とくにアレルギー性鼻炎や扁桃肥大は、季節に関係なく鼻づまりを起こしやすく、知らないうちに口呼吸が習慣化してしまうことがあります。

舌の位置が低い・正しく使えていない

舌は本来、上あご(口蓋)に軽く触れているのが理想的な位置です。
しかし舌の筋力が弱いと、下がった状態で口の中に収まってしまい、気道が狭くなるため、無意識に口を開けて呼吸しやすくなります。
この状態が続くと、歯並びや顎の発達にも影響を与えます。

口まわりの筋力の弱さ(お口ぽかん)

長時間テレビを見ているときや、絵本やおもちゃに夢中になっているときなどに口が開いたままになるのは、口まわりの筋肉が十分に使われていないサインです。
唇を閉じる力が弱いと、自然に口呼吸が定着してしまいます。

姿勢や生活習慣による影響

猫背やうつむいた姿勢は、舌や顎の位置を下げ、気道を狭くしてしまいます。
最近では、長時間座って遊ぶ機会が増え、前かがみの姿勢が定着しやすくなっていることも、口呼吸につながる一因です。
また、柔らかい食べ物を中心とした食生活も、噛む力や口まわりの筋肉の発達不足を引き起こし、自然に口が開いた状態が習慣化してしまうことがあります。

このように、口呼吸は単なるクセではなく、呼吸・筋肉・姿勢・生活習慣のすべてが関わる複合的な問題です。

口呼吸を放っておくとどうなるの?

「たかが口呼吸」と思われがちですが、子供の成長期においては、口呼吸をそのままにしておくと身体・顔・生活のあらゆる面に悪影響を及ぼす可能性があります。具体的には以下のようなリスクが考えられます。

虫歯・歯周病のリスクが高まる

口呼吸では常に口の中が乾燥しやすくなり、唾液の自浄作用が働きにくくなります。
その結果、虫歯や歯周病、口臭の原因となる細菌が繁殖しやすい環境になってしまいます。
とくに子供の歯は大人の歯よりも弱く、虫歯の進行も早いため注意が必要です。

歯並びや顔の発達に影響する

口呼吸は、舌が正しい位置にないことが多く、それによって顎の発達や歯並びに悪影響を与えます。
また、長期間「口が開いた状態」でいると、顔の筋肉バランスが崩れ、あごが細くなる・面長になるなど、顔立ちにも影響が出る可能性があります。

睡眠の質が低下し、集中力や体力にも悪影響

鼻呼吸ができないと、睡眠中にいびきや無呼吸のような症状が起こることもあります。
その結果、睡眠の質が悪化し、日中の集中力の低下・疲れやすさ・イライラといった症状が出る場合も。学習面や生活全般に支障をきたすことも少なくありません。

このように、口呼吸は「放っておいていいクセ」ではなく、子供の健やかな発育にとって見逃せない問題です。

口呼吸の原因に働きかける「マイオブレース治療」

口呼吸は、単なる癖ではなく、お口まわりの筋肉や舌の位置、呼吸習慣などが複雑に絡み合って起こることが多いものです。そして、これらの要因は実は「歯並び」や「あごの成長」にも深く関係しています。

口が開いたままの状態が続くと、舌の位置が下がり、頬や唇の筋肉のバランスも崩れやすくなります。その結果、歯が正しい位置に並ばず、あごの成長にも偏りが生じてしまうことがあります。

こうした呼吸と成長のつながりに着目し、口呼吸の改善と歯並びの予防・治療を同時に行うアプローチが注目されています。それが「マイオブレース治療」です。

歯を動かすのではなく、クセと機能にアプローチ

マイオブレースは、ワイヤーやブラケットを使って歯を直接動かす矯正治療とは異なり、口呼吸・舌のクセ・飲み込み方・姿勢といった習慣に働きかける治療です。

お子さん一人ひとりに合わせたトレーニングとマウスピース型の装置を併用し、正しい呼吸・筋機能・顎の発達を促します。

4つの基本機能を整えるプログラム

マイオブレースでは、以下のような4つの基本機能の改善を目指します。

  • 鼻呼吸を習慣づける:無意識の口呼吸からの脱却
  • 舌を正しい位置に戻す:上顎にぴったりつける習慣
  • 正しい飲み込み方を身につける:舌・頬・唇を正しく使う
  • 良好な姿勢を保つ:顎や呼吸に悪影響を及ぼす猫背などの改善

これらの機能が整うことで、子供の成長とともに歯が自然に並ぶための土台が育っていくのです。

結果として歯並びにも良い影響が

マイオブレースは「歯並びを治す」ことが目的ではありませんが、歯並びが乱れる原因(口呼吸・舌・筋力など)を解消することで、結果的に歯が自然と整いやすくなるという効果が期待できます。
これは「対症療法」ではなく、本質的な機能の改善による「予防的アプローチ」と言えるでしょう。

早期の気づきと対応がカギになります

お子さんの口呼吸は、成長とともに自然に治ると思われがちですが、放置しているとさまざまな悪影響が出てくることもあります。早期の気づきと対応が、健康的な成長や正しい歯並びにつながります。

まずは以下のようなサインがないか、ぜひチェックしてみてください。

  • 寝ているときに口が開いている
  • 日中も口がぽかんと開いていることが多い
  • いびきをかく
  • 鼻がつまっていることが多い
  • 姿勢が悪く、猫背になりやすい

これらの症状に心当たりがある場合は、早めに歯科医にご相談いただくことをおすすめします。

当院では、口呼吸の改善や歯並びの土台づくりを目的とした「マイオブレース治療」にも対応しています。お気軽にご相談ください。

北村英二 院長について

「歯医者は怖い!」―子どもの頃、私もそう思っていました。説明もなく痛い治療はトラウマでした。だからこそ、北村総合歯科では、患者様の不安に寄り添い、丁寧な説明と痛みの少ない治療を大切にしています

日本大学松戸歯学部卒業後、様々な歯科医院での経験を経て2021年に開業。インプラント治療はもちろん、虫歯や歯周病、予防歯科まで幅広く対応し、地域の皆様の歯の健康をサポート。「ここに来てよかった!」と思っていただけるよう、笑顔でお待ちしています。お気軽にご相談ください。