毎日きれいに洗っているのに、入れ歯のにおいが気になる。外したときのにおいが不安で、人と近い距離で話しづらい。そうしたご相談をいただくことがあります。

入れ歯のにおいは、手入れの丁寧さだけの問題ではありません。ここでは、においがどこから来るのかを素材の面から解説し、入れ歯以外の選択肢までお伝えします。

入れ歯のにおいは、入れ歯に残る汚れから出ている

入れ歯の表面には、天然の歯と同じように汚れが付きます。これはデンチャープラークと呼ばれる細菌のかたまりです。

この汚れの中では、カビの一種であるカンジダなども増えていきます。においのもとになるガスは、こうした細菌が汚れを分解するときに発生します。

つまり、においが強くなっているときは、入れ歯に汚れが残り続けている状態と考えられます。

では、毎日洗っていても汚れが残り続けるのはなぜでしょうか。

汚れが残るのは、入れ歯の樹脂(レジン)という素材のため

保険の入れ歯に使われる樹脂(レジン)には、水分を吸うという性質があります。唾液を吸い込みながら、少しずつ劣化していきます。

また、樹脂の表面には目に見えない細かな気泡や傷があります。使ううちに傷は増え、その凹凸に汚れと細菌が入り込みます。

入り込んだ汚れには、ブラシの毛先が届きません。丁寧に洗っても、においが完全には取れないのはこのためです。

手入れだけで追いつかないのであれば、次に考えられるのは素材そのものを変えることです。

歯を補う素材には、樹脂のほかに金属とセラミックがあります。ただし、この2つは使えるケースが違います。

金属を使った入れ歯は、樹脂より汚れがつきにくい

選択肢の1つとして、入れ歯の土台部分を金属で作る方法があります。これは金属床と呼ばれ、チタンやコバルトクロムなどが使われます。

金属の表面は緻密で水分を吸わないため、樹脂に比べて汚れが残りにくくなります。薄く作れるので装着感が軽く、熱が伝わるため食事の温度も感じやすくなります。

ただし、人工の歯や歯茎に触れる部分には樹脂を使います。金属床にすればにおいがなくなる、というわけではない点は知っておいてください。

では、もう一つの素材であるセラミックはどうでしょうか。

セラミックは、お茶碗やお皿と同じ陶器の仲間の素材です。同じ「歯を補うもの」でも、においのつきやすさは樹脂と大きく変わります。なぜそれほど違うのか、身近なものにたとえて見ていきましょう。

樹脂とセラミックの違いは、お弁当箱と瀬戸物の違い

プラスチックのお弁当箱を洗ったとき、油のぬめりがなかなか取れないと感じたことはないでしょうか。表面に細かい傷があり、そこに油分が入り込むためです。

一方、瀬戸物のお皿は水で流すだけでも汚れが落ちやすくなります。表面が硬くなめらかで、水分も油分も染み込まないからです。

歯科で使う樹脂とセラミックの関係も、これとよく似ています。セラミックは吸水せず表面がなめらかなため、汚れが残りにくい素材です。

ただし、セラミックで入れ歯を作ることはできません。セラミックが使われるのは、かぶせ物や、インプラントの人工の歯です。

においの面では、セラミックを使うインプラントという選択肢もある

インプラントは、あごの骨に埋めた土台の上に人工の歯を取り付ける治療です。この人工の歯には、セラミックや、より硬くて丈夫なジルコニア(人工ダイヤと同じ成分の素材)が使われます。

インプラントは取り外して洗う必要がなく、素材そのものが汚れやにおいを吸い込みません。樹脂が吸い込んだにおいに悩む、ということがなくなります。

どの素材で人工の歯を作るかは、失った歯の本数やお口の状態によって変わります。ご自身の場合にどうなるかは、診察のうえでお伝えします。

ただし、手入れを怠れば歯茎に炎症(インプラント周囲炎)が起こり、においの原因になります。天然の歯と同じように、毎日のケアと定期的なメンテナンスは必要です。

入れ歯との違いは、においだけではありません。

  • 取り外して洗う手間がない
  • バネがないので笑ったときに金具が見えない
  • 力が骨に直接伝わるため、かたいものもかみやすい
  • バネをかける歯に負担が集中しない
  • かむ力があごの骨に伝わり、骨が痩せにくい

一方で、外科処置を伴うこと、自由診療になること、治療期間が数か月かかることは、あらかじめ知っておく必要があります。

なお、インプラントは入れ歯をやめるためだけの治療ではありません。総入れ歯が動いて困る場合に、少数のインプラントで入れ歯を支えるインプラントオーバーデンチャーという方法もあります。

入れ歯を支える形になるため、お手入れはこれまでと同じように必要です。

とはいえ、入れ歯を続けるという選択も十分にあります。

入れ歯を続ける場合にも、においを抑える方法はある

入れ歯が良くない治療というわけではありません。取り外して洗える、手術が要らない、費用を抑えられるなど、入れ歯にしかない利点もあります。

においを抑える基本は、毎日の洗浄です。ブラシで汚れをこすり落としたうえで、洗浄剤に浸けて細菌を減らします。

どちらか一方だけでは落としきれません。ブラシだけでは細かな凹凸の汚れが残り、洗浄剤だけでは厚い汚れの内側まで届かないためです。

それでも取れないにおいは、樹脂が吸い込んでしまったものです。この場合は、汚れがつきにくい金属床への作り替えが選択肢になります。

合わなくなった入れ歯も、においが強くなる原因です。すき間やずれがあるとそこに汚れがたまるため、調整や作り直しで軽くなることがあります。

どこまで手をかけるかは、今の入れ歯の状態と、何を一番変えたいかによって変わります。

入れ歯のにおいが気になる方はご相談ください

入れ歯のにおいは、我慢して付き合うものではありません。素材を変えるだけで軽くなることもあれば、別の治療のほうが合っていることもあります。

まずは今の入れ歯の状態を見せていただくところから始められます。私たちは、ご希望や生活に合わせて選んでいただけるよう、時間をかけてご説明しています。

※医療広告ガイドラインに基づき、自由診療に関する費用および治療に伴うリスク・副作用等の情報を以下に記載しております。

治療内容と期間

自費の入れ歯は、精密な型取りやかみ合わせの確認を重ねて作製します。
治療はカウンセリングから始まり、通常は2〜3ヶ月・4〜6回程度の通院で完成します(症例により異なります)。

費用について

内容費用(税込)
レジン床¥418,000
金属床¥440,000
ノンクラスプ¥88,000

主なリスク・副作用

  • 装着当初は、話しにくさや異物感などの違和感を覚えることがあります。
  • 部分入れ歯では、支えとなる歯に負担がかかり、痛みやぐらつきが生じる可能性があります。
  • 使用中に入れ歯が破損したり、経年劣化で変形することがあります。
  • 金属素材を使用する場合、ごくまれに金属アレルギーが起こることがあります。
  • 口腔内の変化に応じて、定期的な調整や作り直しが必要になることがあります。

北村英二 院長について

「歯医者は怖い!」―子どもの頃、私もそう思っていました。説明もなく痛い治療はトラウマでした。だからこそ、北村総合歯科では、患者様の不安に寄り添い、丁寧な説明と痛みの少ない治療を大切にしています

日本大学松戸歯学部卒業後、様々な歯科医院での経験を経て2021年に開業。インプラント治療はもちろん、虫歯や歯周病、予防歯科まで幅広く対応し、地域の皆様の歯の健康をサポート。「ここに来てよかった!」と思っていただけるよう、笑顔でお待ちしています。お気軽にご相談ください。