「できれば自分の歯を抜きたくない」
「まだなんとか使えているし…」
「抜歯は怖いし、不安」
抜歯をすすめられたとき、多くの方はこう感じます。
それは、まったく自然なことです。
当院にも、「他院で抜歯と言われたけど、本当に抜かなきゃいけないのか不安で…」というご相談がよく寄せられます。
歯を1本でも多く残したいという気持ちは誰もが抱くものだと思いますし、実際、私たちの治療方針も「できる限り歯を残す」という考えが基本にあります。
そのため、患者様の意に反して、無理に抜くことはありません。
残せる可能性があるなら、まずはその道を検討します。
ただ一方で、「歯を残すこと」だけに固執してしまうと、かえってお口に悪影響ということがあることも事実。
ここでは、なぜ抜歯が必要だと判断されるのか、その理由と基準について、できるだけわかりやすくお伝えしていきます。
Contents
「歯を残すこと=抜かないこと」ではない
「歯を残したい」という想いから、「抜かないで治したい」と考えるのは当然です。
ですが、「歯を残す」ということは、単に今ある歯を抜かずに残すこととは少し違います。
たとえば、歯周病が進行して歯がグラグラしている場合、その歯を放置してしまうことで、周囲の健康な歯や骨にまで影響が及ぶことがあるからです。
1本のグラグラした歯を残すことにこだわるのか?
将来的にさらに複数の歯を失うリスクを防ぐために抜歯を選ぶのか?
私たちが目指す「歯を守る」とは、お口全体の健康を長く維持することにあります。
そのため、「歯を守る」という選択として、抜歯という判断も必要になってきます。
これは、歯科医師としての経験と責任のもとに出す、苦渋の決断でもあります。
実は多くの人が誤解している「グラグラの原因」
歯がグラグラしていると、「その歯自体が悪い」と思われがちですが実際は違う場合も多いです。原因の多くは、歯を支える「あごの骨」の方にあります。
たとえば歯周病が進むと、骨が少しずつ溶け、歯を支える力が弱まって揺れが生じます。また、歯ぎしりや食いしばりで強い力がかかると、骨に負担がかかり、同じように歯がグラつくこともあります。
このように、グラグラの背景には、歯そのものというよりは、骨や噛み合わせなど見えにくい問題が関係していることが多いのです。
歯がグラグラするの本当の原因は?よくある3つのケース
歯のグラつきには、見た目や感覚だけではわからない原因が隠れています。
ここでは、実際に私たちが診療の現場でよく目にする「歯がグラグラする代表的な原因」を3つご紹介します。
① 重度の歯周病による骨の吸収

歯周病が進行すると、歯を支える骨(歯槽骨)がじわじわと溶けていきます。
骨が支えられなくなると、歯は自然とグラつくようになります。
この場合、歯だけでなく骨もかなり失われているため、治療による回復は難しく、抜歯を検討すべき状態であることが多くなります。
② 強すぎる咬合力(噛み合わせの問題)

噛み合わせのバランスが悪いと、一部の歯にだけ強い力がかかり、その負担で歯が揺れてしまうことがあります。
このような場合は、噛み合わせの調整やマウスピースの使用で改善できる可能性があります。
ただし、長年放置されていた場合は骨にダメージが蓄積し、抜歯が必要になるケースもあります。
③ 骨の内側で起きている吸収や感染
見た目ではそれほどグラグラしていなくても、レントゲンで見ると歯の根の周囲の骨が溶けていることがあります。
感染や歯根破折(根のヒビ)などが原因で、歯の土台自体が弱くなっている状態です。
この場合も、延命治療よりも抜歯を選んだほうが全体を守れることがあります。
こうした原因を正確に診断するためには、視診だけでなく、レントゲンや歯周ポケットの検査など総合的な判断が必要です。
残せる歯・残せない歯をどう見極めるか?
「グラグラしていても、まだ噛めるから大丈夫」
「痛みがないから、このまま様子を見よう」
そう考えている方は少なくありません。
ですが、残せる歯と残せない歯の判断は、患者さんご自身では非常に難しいものです。
歯科医院では、以下のような複数の視点から総合的に診断を行います。
- 歯周ポケットの深さ
ポケットの深さが6mm以上あると、歯を支える骨の吸収がかなり進行している可能性があります。治療をしても回復が難しく、再発のリスクも高くなります。 - 歯の動揺度(グラつきの度合い)
手で軽く押すと動く程度なのか、上下左右に大きく揺れるのか。
重度の動揺がある場合は、すでに骨の支えが不十分になっていることが多く、周囲への影響も懸念されます。 - 周囲の骨や歯への影響
問題の歯が周囲の骨を溶かしていたり、隣の歯に負担をかけている場合は、「1本を守ること」が「他の歯を失う原因」になるリスクが出てきます。
このように、「今の状態で何がどれだけ残っているか」だけでなく、「これから先、他の歯や骨にどう影響を与えるか」を踏まえて判断することが大切です。
私たちももちろん、残せる歯はできる限り残したいと考えています。
ただ、「このままでは周りの歯までダメにしてしまう」と判断される場合には、あえて抜歯をおすすめすることがあります。
それは、患者さんのこれからの健康を守るための選択なのです。
納得できる治療のために|気になることは何でもご相談ください
歯を抜くかどうかは、誰にとっても大きな決断です。
だからこそ、「もっと他の選択肢はないのか」「この判断は本当に正しいのか」と悩まれるのは当然のことです。
私たちは、そうしたお気持ちに正面から向き合い、納得して前に進める治療を一緒に考えたいと考えています。
無理に治療をすすめることはありません。
「残せる歯かどうかをきちんと調べてほしい」
「他院で抜歯と言われたけど、他に方法がないか聞きたい」
そのようなご相談も歓迎しています。
少しでも不安や迷いがある方は、ぜひ一度お話をお聞かせください。
本当に歯を大切にしたいと思うお気持ちに寄り添ったご提案をさせていただきます。
北村英二 院長について
「歯医者は怖い!」―子どもの頃、私もそう思っていました。説明もなく痛い治療はトラウマでした。だからこそ、北村総合歯科では、患者様の不安に寄り添い、丁寧な説明と痛みの少ない治療を大切にしています。
日本大学松戸歯学部卒業後、様々な歯科医院での経験を経て2021年に開業。インプラント治療はもちろん、虫歯や歯周病、予防歯科まで幅広く対応し、地域の皆様の歯の健康をサポート。「ここに来てよかった!」と思っていただけるよう、笑顔でお待ちしています。お気軽にご相談ください。
