ある日、染みていた歯に激痛が走ったら睡眠中の「アレ」が原因かもしれません。

その原因とは「歯ぎしり」です。

歯ぎしりは、無意識のうちに歯に過度な力を加え、特に奥歯に負担をかけることで、歯の損傷や割れを引き起こすリスクがあります。睡眠中に起きるため自覚するのが難しく、放置していると症状が悪化し、治療が複雑になる可能性もあります。

ここでは、歯ぎしりが引き起こす歯の痛みと損傷のメカニズムと、歯が割れしまった場合の治療法についてお話します。適切なケアで健康な歯を守りましょう。

歯ぎしりの原因は完全には解明されていない

歯ぎしりの原因は今も完全には解明されておらず、以下のような要因が影響を及ぼしていると考えられています。

  1. ストレス
    日常生活での精神的・肉体的なストレスは、歯ぎしりの主な原因とされています。ストレスを感じると、無意識に歯を食いしばることで緊張を和らげようとするため、歯ぎしりが発生しやすくなります。
  2. 噛み合わせや口内の不快感
    歯の噛み合わせが悪い場合や、虫歯・歯周病などで口内に不快感があると、無意識に歯ぎしりをしてしまうことがあります。特に、詰め物や被せ物が合っていない場合や、歯並びが悪いと、歯ぎしりの原因となることがあります。
  3. 神経・脳の働き
    歯ぎしりは睡眠中の脳の覚醒反応(マイクロアラウザル)と関連があると考えられています。睡眠の質が低下すると、無意識に歯ぎしりが起こることが報告されています。
  4. 睡眠時無呼吸症候群や他の睡眠障害
    睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害は、歯ぎしりと関連しているとされています。これらの障害により睡眠が浅くなり、歯ぎしりが発生しやすくなる可能性があります。
  5. 遺伝的要因
    家族内で歯ぎしりが多く見られることから、遺伝的な要素が関与している可能性も指摘されています。

これらの要因に心当たりがある場合、歯ぎしりのリスクが高まる可能性があります。早めの対策や専門家への相談を検討してみてください。

歯ぎしりによる歯の割れを防ぐための効果的な予防策

歯ぎしりによる歯の割れを防ぐためには以下の予防策を行いましょう。

  1. マウスピースの使用
    就寝時にマウスピース(ナイトガード)を装着することで、歯ぎしりによる歯への直接的な負担を軽減できます。歯科医師に相談し、お口に合ったマウスピースを作成してもらいましょう。
  2. ストレスの管理
    ストレスは歯ぎしりの主な原因の一つと言われています。リラクゼーション法や趣味の時間を取り入れるなど、ストレスを適切に管理することで、歯ぎしりの頻度を減らすことが期待できます。
  3. 生活習慣の見直し
    カフェインやアルコールの摂取は、歯ぎしりを悪化させる可能性があります。これらの摂取を控え、規則正しい生活を心がけることで、歯ぎしりの予防につながります。
  4. 噛み合わせの調整
    歯の噛み合わせの問題が歯ぎしりを引き起こすことがあります。歯科医師に相談し、必要に応じて噛み合わせの調整や矯正治療を受けることを検討してください。
  5. 定期的な歯科検診
    定期的に歯科検診を受けることで、歯ぎしりによる歯の損傷を早期に発見し、適切な対策を講じることができます。虫歯などで歯が悪くなくても、定期的に歯のチェックをしてもらいましょう。

これらの予防策を実践することで、歯ぎしりによる歯の割れを効果的に防ぐことができます。

歯ぎしりは睡眠の問題なので、歯医者さんで診てもらえるとは思っていなかったという方もいるかもしれませんが、マウスピース(ナイトガード)は当院でも作れますので、お悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

歯ぎしりで歯が割れてしまったときの治療法は?

歯ぎしりが原因で突然、歯に激痛が走った場合、主に「歯のひび割れ」「歯根破折」「歯髄炎」の3つの可能性が考えられます。それぞれの症状と治療法について見ていきましょう。

1. 歯のひび割れ

歯ぎしりの強い力が続くことで歯に小さなヒビが入り、噛んだ瞬間に鋭い痛みが走るのが特徴です。

軽度であればクラウン(被せ物)で補強し、歯を残すことができます。しかし、ヒビが深く神経まで到達している場合は根管治療が必要になり、それでも改善しない場合は抜歯になる可能性もあります。早期治療を行えば、多くの場合は歯を保存できます。

2. 歯根破折(しこんはせつ)

歯の根の部分が割れてしまう状態で、歯ぎしりによる強い力が長期間加わることで発生します。

突然の激痛や噛んだときの違和感があり、時間が経つと歯茎の腫れや膿がたまることもあります。小さなヒビであれば歯根接着治療やクラウンで対応できる可能性がありますが、歯根が縦に完全に割れている場合は治療が困難なため、抜歯が必要になることが多いです。

3. 歯髄炎(しずいえん)

歯ぎしりによって歯に過度な負担がかかると、内部の神経(歯髄)が炎症を起こし、ズキズキとした持続的な痛みが発生します。特に温かいものがしみる症状がある場合は、神経のダメージが進行している可能性があります。

歯髄炎は根管治療(神経を取り除く治療)によって歯を残せることが多いですが、炎症が進行し歯の内部が壊死していたり、感染が広がっていたりすると、抜歯が必要になることもあります。

歯ぎしりのダメージを最も受けやすいのは第一大臼歯

治療法のお話をする前に、お伝えしておきたいことがあります。それは、歯ぎしりによる損傷や割れの影響を最も受けやすいのが「第一大臼歯」だということです。

第一大臼歯は、6歳ごろに生える最初の永久歯で、咀嚼(そしゃく)の中心となる重要な歯です。食事の際に最も多くの力がかかるため、噛む力の約60%~70%がこの歯に集中すると言われています。

特に歯ぎしりの際は、食事時の2~3倍の力が加わることがあり、第一大臼歯には大きな負荷がかかります。その結果、ダメージが蓄積しやすく、ひび割れや摩耗、歯根破折などのリスクが高まります。

第一大臼歯はお口の中で非常に重要な役割を果たしているため、もし抜歯が必要になった場合、どのような治療を選択するかが、将来のお口全体の健康に大きな影響を与えるということを理解しておくことが大切です。

というわけで、ここでは歯ぎしりが原因で第一大臼歯の抜歯が必要になってしまった場合、どんな治療法があるのかを見ていきたいと思います。

歯ぎしりが原因で抜歯をした後の治療法

歯が割れしまい、抜歯が必要になったときの治療法は、主に「入れ歯」「ブリッジ」「インプラント」の3つがあります。

当院では、根本的な治療法としてインプラントを基本的におすすめしていますが、患者さんのご希望もありますので、それぞれの特徴やメリット・デメリットを理解して、ご自身に最適な治療法を選択していただくことが大切だと思います。

1. 部分入れ歯

部分入れ歯は、取り外し可能な人工の歯です。治療期間が短く、数週間で作製・装着が可能です。また、保険適用の場合、他の治療法に比べて費用を抑えられる点が大きなメリットです。

しかし、入れ歯は取り外し式のため、装着時に違和感を感じることがあります。また、噛む力が天然の歯や他の治療法に比べて劣ることがあり、硬いものが食べにくい場合があります。さらに、隣接する歯に金属の留め具をかけるため、支えとなる歯に負担がかかる可能性があります。

特に、1本だけの入れ歯は一般的に不安定で外れやすい傾向があり、誤って飲み込んでしまうリスクが指摘されています。

2. ブリッジ

ブリッジは、失った歯の両隣の健康な歯を削り、連結した人工の歯を装着する治療法です。この方法は、比較的短期間で治療が完了し、見た目や噛む機能も自然に近い状態を再現できます。また、固定式のため、装着時の違和感が少ないと感じる患者さんが多いです。

しかし、ブリッジを装着するためには、欠損した歯の両隣の健康な歯を削る必要があります。これにより、支台となる歯に負担がかかり、将来的に虫歯や歯周病のリスクが高まる可能性があります。さらに、ブリッジの下の部分の骨が徐々に痩せてしまうこともリスクの1つです。

3. インプラント

インプラントは、あごの骨に人工の歯根(チタン製)を埋め込み、その上に人工の歯を装着する治療法です。この方法は、天然の歯に近い見た目と機能を再現できるため、審美性と機能性に優れています

ブリッジのように隣接する健康な歯を削る必要がなく、独立した構造のため他の歯への負担も軽減されます。さらに、あごの骨に直接刺激を与えることで、骨の吸収(痩せ)を防ぐ効果も期待できます。

一方で、インプラントは外科的手術が必要な治療です。治療期間が長くなることがあり、費用が高額になる傾向もあります。

以上、3つの代表的な治療法についてご紹介しました。先ほどもお伝えしたとおり、当院では特にインプラントを根本的な治療法としておすすめしております。

インプラントは、天然の歯に近い機能性と審美性を持ち、他の歯への影響も少ないため、長期的な視点で見ても優れた選択肢だからです。

まとめ

歯ぎしりは、気づかないうちに歯に大きな負担をかけ、割れや損傷の原因となることがあります。特に奥歯は強い力がかかりやすく、放置すると抜歯が必要になることもあります。しかし、適切な予防策を講じることで、歯ぎしりのダメージを軽減し、健康な歯を守ることが可能です。

もし歯ぎしりによる歯の違和感や痛みを感じる場合は、早めの対策が重要です。当院では、歯ぎしりを防ぐためのマウスピースの作製や、噛み合わせの調整、歯が割れてしまった際の治療まで幅広く対応しています。歯の健康を守るためにも、お悩みの方はぜひ一度ご相談ください。

北村英二 院長について

「歯医者は怖い!」―子どもの頃、私もそう思っていました。説明もなく痛い治療はトラウマでした。だからこそ、北村総合歯科では、患者様の不安に寄り添い、丁寧な説明と痛みの少ない治療を大切にしています

日本大学松戸歯学部卒業後、様々な歯科医院での経験を経て2021年に開業。インプラント治療はもちろん、虫歯や歯周病、予防歯科まで幅広く対応し、地域の皆様の歯の健康をサポート。「ここに来てよかった!」と思っていただけるよう、笑顔でお待ちしています。お気軽にご相談ください。